トイレットペーパーは現代の生活に欠かせない日用品であり、衛生を保つ上で重要な役割を果たしています。しかし、その起源や普及の経緯は、地域や時代によって異なります。本記事では、中国、日本、欧米それぞれの記録をもとに紹介します。
中国|6世紀の文献に残る最古の記録と大量生産の始まり
紙を使った清拭の最古の記録は6世紀の中国に見られます。学者・顔之推が著した『顔氏家訓』には、文字の書かれた紙を厠で使わないようにとする記述があり、この頃すでに紙を用いる習慣が存在していました。14世紀には浙江州で年間1000万枚規模のトイレ用紙が生産され、1393年には米を原料としたトイレットペーパーが中国皇室用に大量生産されていました。また、紀元前2世紀の武帝の墓から発見された粗い麻紙も、清拭用とみられています。
考古学的には、約2000年前のシルクロード沿いの休憩所跡から、布で覆われた竹や木の棒「籌木(ちゅうぎ)」が発掘され、表面に人由来の寄生虫の痕跡が確認されています。これらはトイレ専用の清拭具であったことが明らかになっています。

アメリカ|薬用シートからロール式への進化
アメリカでは、1857年にジョセフ・ガイエティが薬用処理を施したシート状のトイレットペーパーを製造しました。アロエ成分で保湿されており、当初は医療用品として販売されましたが、当時は古新聞やカタログを使う習慣があり、普及は限定的でした。
1871年、セス・ウェラーが紙をミシン目付きでロール状に加工する特許を取得し、1877年にはAPW社が製造を開始しました。1879年にはスコットペーパー社も製造に参入し、1900年代に室内トイレが普及するとともに需要が拡大しました。20世紀には長巻や二重構造の製品が登場し、1990年代には再びアロエ成分を配合した製品が販売されました。
ヨーロッパ|古代の清拭具から下水道時代の普及へ
ヨーロッパでの紙の使用は中国より遅く、16世紀頃から試みられ、17世紀に「トイレットペーパー」という言葉が登場しました。1840年に木材パルプが発明され、大量生産が可能となります。1879年にはイギリスでロール式が発売されましたが、1880年代に下水道が整備されるまでは普及が進みませんでした。
それ以前は、古代ローマでスポンジを棒の先につけた「テルソリウム」や、古代ギリシャで陶器片や小石(ペッソイ)が使用されていました。フランスでは16世紀の作家フランソワ・ラブレーが紙の使用に否定的な記述を残しており、ガチョウの首を推奨するなど地域ごとの方法が存在しました。
他地域|多様な素材と文化が生んだ清拭方法
世界各地では紙以外の多様な清拭方法が存在しました。インドや中東では水と左手を使い、その後手を洗う習慣が一般的です。サウジアラビアやアフリカの一部では水が貴重なため砂が用いられました。北米ではトウモロコシの芯が使われ、寒冷地のスウェーデンやイヌイット地域では雪が使用されました。地中海諸島では海綿、エジプトでは冷ました小石、ネパールでは樹皮、日本や韓国では茎や海藻などが使われていました。
日本|籌木と浅草紙から現代製品への発展
日本では、古代は葉や海藻、手による清拭が一般的で、奈良時代には細長い木片「籌木」が登場しました。平安時代末期には一部の上流階級で紙が使われ、鎌倉・江戸期には再生紙「浅草紙」が都市部で普及しました。浅草紙は古紙を叩き漉いただけの粗い紙で、庶民は持参して使用しました。
明治期には外国人利用施設で輸入品が設置され、大正後期に国内生産が始まりました。1924年には外国航路汽船用に製造され、昭和30年代以降の上下水道整備と洋式化で急速に普及しました。1977年にはロール式がちり紙の生産量を上回り、その後は二重構造、長巻、芯なし、香り付き、温水洗浄便座用など多様な製品が登場しました。
現代のトイレットペーパーの状況
現在、世界人口の半数程度がトイレットペーパーを使用していますが、地域差があります。アメリカやカナダ、日本などでは柔らかい紙が主流で水に流せますが、多くの国や地域では使用後に流せない場合があります。日本の一人当たり年間消費量は約8kg(ロール換算で約53個)で、アメリカは約9kgとされています。生産国としては、日本では富士市が重要な拠点であり、国内生産量の大きな割合を占めます。富士市では古紙回収と再生利用も行われ、上質古紙1kgからトイレットペーパー5個が再生されています。
トイレットペーパーは、中国での6世紀の使用記録から始まり、欧米での工業化、日本での浅草紙や輸入品の導入を経て、現代の多様な製品へと発展しました。作り方や種類は時代とともに進化し、衛生面と使用感の向上に寄与しています。その普及には、紙の大量生産技術や下水道整備など社会的な背景が深く関わっています。
コロナ禍に入りつつあるときに、トイレットペーパー騒動がありましたよね。あのときでさえゾッとしたのですが、なくなってしまったらと考えてしまうと、仕事が手につかなくなりそうでした。それくらい大事なものなんですよね。毎日使うものですし。あれ以来、ストックすることが癖になりました。
オリジィだよ!調べてみると、トイレットペーパーって世界中でいろんな歴史をたどってきたんだね。中国から始まり、日本や欧米で形や作り方が変わってきたことがよくわかったよ。
参考文献: ミツカン 水の文化センター / Riho / NIKKEI STYLE / CBC MAGAZINE


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