サンドウィッチは世界中で親しまれている定番の料理ですが、その起源や歴史については意外と知られていません。現在では朝食やランチ、軽食として広く食べられ、国や地域ごとに多様なバリエーションが存在します。しかし、もともとは古代から続く「パンと具材を組み合わせる」という食習慣と、18世紀イギリスの一人の伯爵の逸話から始まったものです。本記事では、古代の類似食からサンドウィッチ伯爵のエピソード、語源の由来、19世紀以降の広がり、そして現代における多様な展開までを詳しく解説します。
古代に見られるサンドウィッチの原型
サンドウィッチの歴史をさかのぼると、その発想自体は古代から存在していたことがわかります。紀元前1世紀、ユダヤの学者ヒレル・ザ・エルダーは、過越祭の儀式において、焼いた子羊の肉と苦菜を無発酵のパンであるマッツァに挟んで食べる習慣を広めました。これは宗教的意味を持ちながら、同時に「具材をパンで包む」という非常に実用的な食べ方でもありました。そのため後世の研究者たちは、この料理をサンドウィッチの直接的な先駆けと位置づけています。また中世ヨーロッパでは、厚切りのパンを「トレンチャー」と呼び、肉やソースを盛り付けるための皿として使う風習が広がっていました。この食べ方はやがて具材とパンを一緒に食べる形に変化し、現代のオープンサンドに近い形態へと発展していきました。こうした背景から、パンと具材を組み合わせる食文化は、地域や時代を問わず自然に生まれていたことがうかがえます。
16世紀から17世紀にかけての呼び方と食習慣
現在の「サンドウィッチ」という名称が登場する以前、イギリスでは「パンと肉」や「パンとチーズ」といった単純な言葉で呼ばれていました。当時の戯曲や文学作品をひも解くと、この呼び方が広く使われていたことがわかります。たとえばシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』にも「bread and cheese」という表現が出てきます。これは、まだサンドウィッチという言葉が存在していなかった時代に、人々が日常的にパンと具材を一緒に食べていた証拠です。つまり、名称こそなかったものの、サンドウィッチに近い食文化はすでに庶民の生活に根付いていたといえます。このような背景を踏まえると、18世紀に新しい名前が与えられる以前から、食習慣としてはすでに成立していたことが理解できます。
18世紀イギリスにおける誕生と名称の由来
「サンドウィッチ」という言葉が歴史に登場するのは18世紀、イギリスの社交文化の中でした。1762年、第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギューが、ギャンブルの卓を離れることなく食事を取るため、肉をパンに挟んで持ってくるよう従者に命じたと伝えられています。これが周囲の人々に広まり、伯爵の名前にちなんで「サンドウィッチ」と呼ばれるようになったとされます。実際、同時代の歴史家エドワード・ギボンの日記にも「冷たい肉やサンドウィッチを楽しむ紳士たち」が記録されており、この呼び方が1760年代にはすでに定着していたことが確認できます。このように、特定の人物と結びつけられたことが、サンドウィッチという名称を一気に普及させるきっかけとなったのです。

イギリス社会での普及と食文化への定着
サンドウィッチは、当初は上流階級の間で流行しました。片手で簡単に食べられる利便性は社交の場に適しており、やがて市民の間にも広まっていきました。18世紀末から19世紀にかけて、ロンドンのコーヒーハウスでは軽食として提供されるようになり、サンドウィッチは外食文化の一部を形成しました。さらに19世紀に入ると、鉄道旅行の普及に伴い、駅構内で販売される手軽な食事としても定着しました。これにより、サンドウィッチは移動中でも食べられる携帯食としての役割を果たすようになりました。このような背景は、サンドウィッチが単なる料理を超え、近代化の進展に伴うライフスタイルの変化を映し出す食べ物となったことを示しています。
アメリカへの伝来と多様な発展
サンドウィッチがアメリカに広まったのは19世紀前半です。料理研究家エリザベス・レスリーが1840年に出版した料理本『Directions for Cookery』にはハムサンドウィッチのレシピが掲載されており、これがアメリカでの普及を後押ししました。その後、サンドウィッチはアメリカ文化の中で独自の発展を遂げ、20世紀初頭にはピーナッツバター&ジェリーサンド、クラブサンド、BLTなどが誕生しました。さらにフィラデルフィアではチーズステーキ、ルイジアナではポーボーイといった地域特有のサンドウィッチが考案され、アメリカの食文化に深く根付きました。20世紀にスライス済みのパンが登場すると、家庭での調理も容易になり、サンドウィッチは日常食として完全に定着しました。
世界各地での広がりと多様化
サンドウィッチはイギリスからアメリカを経由して世界各地に広がり、それぞれの地域で独自の発展を遂げました。フランスのクロックムッシュはベシャメルソースとチーズを使った温かいサンドウィッチとして知られ、イタリアではパニーニが広まりました。さらにベトナムでは、フランス統治時代に伝わったバゲットを用いたバインミーが誕生し、今日では国際的に人気を集めています。このように、パンと具材を組み合わせるというシンプルな構造が、地域ごとの食材や調理法と結びつき、多様な形態を生み出してきたのです。
語源の定着と文化的意義
「サンドウィッチ」という言葉は、第4代サンドウィッチ伯爵の名前に由来しており、18世紀のイギリスで広まりました。オックスフォード英語辞典をはじめとする辞書類や当時の旅行記にもその使用例が確認できます。この語源は、料理の実用性と社交文化が結びついた結果として誕生したものです。今日では、サンドウィッチは学校給食、家庭料理、レストランなど、あらゆる場面で提供されており、その呼び名は世界共通語として定着しています。サンドウィッチの歴史を振り返ると、単なる料理の枠を超えて、人々の生活様式や社会の変化を映し出す存在であることが理解できます。
サンドウィッチの歴史は、単に「伯爵が考案した食べ物」という逸話にとどまりません。古代の宗教的儀式や日常の食習慣に見られる「パンと具材を組み合わせる」文化を背景に、18世紀イギリスで名称を得たサンドウィッチは、19世紀以降、産業の発展とともに世界中に広がりました。各国で独自の発展を遂げたサンドウィッチは、現在では健康志向や食文化の多様化にも対応し、さらに幅広い形で親しまれています。その過程をたどることで、サンドウィッチは単なる軽食ではなく、人々の暮らしや文化の変化を映し出す存在であることがわかります。サンドウィッチの起源と歴史を知ることは、食の進化を理解するうえで欠かせない視点となるのです。
オリジィだよ!サンドウィッチって、ただの軽食じゃなくて、人の暮らしや文化の移り変わりをそのまま映してきた食べ物なんだね。古代の儀式から伯爵の逸話まで、歴史を知ると一口の重みがちょっと違って感じられるよ。
参考文献: THE OLD DUTCH / EAST BAY DELI / Tony Luke’s / HISTORY


コメント